国立科学博物館は9月3日、科学技術の発達の歴史で大きな意義がある重要科学技術史資料(未来技術遺産)の2019年の新たな登録を発表した。
今年登録された26件の中には、「カシオ ヘビーデューティースポーツ DW-5000C」(G-SHOCK)、「シチズン クオーツ クリストロン ソーラーセル Cal.8629-7J」、「セイコー クオーツLC V.F.A. 06LC」が含まれる。
三者三様ながらどの時計も日本だけでなく、世界の時計史に名を残すモデルが選定された。それは70〜80年代に登場した技術が今の時代に至るまで活用され続けているからである。
選定理由
耐衝撃腕時計「G-SHOCK」の一号機である。電子部品をパッケージしている時計のエンジン部分への衝撃を、構造的に多段階で吸収する「5段階衝撃吸収構造」、及びエンジン部分を浮いている状態に近づける「点接触心臓部浮遊構造」の画期的な構成によって、従来にない耐衝撃性能を実現した。時計の耐衝撃性を驚異的に引き上げ、高級機にしかできなかった過酷なアウトドアやスポーツシーンでの使用を、だれでも使える身近なものにした製品として重要である。
オイルショック騒動など省資源・省エネ意識の高まる時代にいち早く光発電に着目、1974(昭和49)年にソーラーパネルを初めて時計に搭載した光発電時計のプロトタイプが製作された。さらに改良を加え、2年後に製品化にこぎ着けた。単結晶シリコン太陽電池を8枚使用。満充電からの持続 時間は通常使用で約5年間、最初の2年間は全く光を当てなくても動き続けるものであった。環境問題に熱心に取り組むドイツ市場では大きな反響を呼んだ。太陽電池式腕時計の先駆的機種として重要である。
世界で初めて時・分・秒の6桁表示をLCD表示によって実現したデジタルウオッチである。1970年代初頭、LED(Light Emitting Diode 発光ダイオー ド)の開発によって、時刻をデジタル表示する腕時計が出始めた中、LED 表示よりも省電力で視認性に優れ、多機能表示に適した「LCD(Liquid Crystal Display 液晶ディスプレイ)」を採用した。このLCD表示のデジタルウオッチが市場の需要に合致し、その後、FE(Field Effect)方式の6 桁表示デジタルウオッチが世界的な標準となった。クオーツウオッチの標準となる表示方式を確立した機器として重要である。
今年の登録には他にも、ニコンの一眼レフカメラ「ニコンF」、ソニーのポータブルCDプレーヤー「D-50」、ヤマハの「デジタルシンセサイザー DX7」などがある。
記事の出典や、これまで登録された技術などは下記、産業技術史資料情報センターのホームページより、ご確認いただけます。
http://sts.kahaku.go.jp/material/